
印刷の世界でも、蛍光色やネオンカラーが改めて注目を集めています。
Y2Kブームの再来とともに、未来的なデザインの流れの中で、強いアクセントとして使われることが増えてきました。
実際に、当研究所で公開している蛍光に関する記事やSNS投稿の閲覧数・反応数も増えていて、その関心の高まりを感じます。
また、私たちが制作して使用している蛍光名刺についても「どこで印刷したの?」「同じものを作りたい!」といった声をよくいただきます。こうした状況から、蛍光印刷は単なる話題の色ではなく、実際に使ってみたい表現方法として広がりを見せています。
印刷で “蛍光色” といってもさまざまな表現方法がありますが
今回はオフセット油性印刷における蛍光インキと紙の組み合わせに注目しその魅力をじっくり探ってみたいと思います
検証
様々な蛍光インキを、様々な用紙に印刷して
印象の違いを実際に見てみよう
検証スタート
今回使用した蛍光インキは以下の6種類です。
T&K TOKA社製 TOKA FLASH VIVA DX 蛍光インキシリーズを使用しています。
● ピンク(TOKA FLASH VIVA DX 190 / Juno Pink)
● レッド(TOKA FLASH VIVA DX 350 / Pluto Red)
● オレンジ(TOKA FLASH VIVA DX 450 / Mercury Orange)
● 赤みのイエロー(TOKA FLASH VIVA DX 580 / Minerva Yellow)
● イエロー(TOKA FLASH VIVA DX 600 / Jupiter Yellow)
● グリーン(TOKA FLASH VIVA DX 650 / Aurora Green)

どれも一般的なプロセスカラーとは異なる発色を持つ「蛍光インキ」です。
蛍光色が鮮やかに眩しく明るく見えるのは、インキに含まれている「蛍光体」が紫外線などの不可視光を吸収し、それを可視光に変換して放射するためです。
この現象により、可視光の輝度が増したように感じられ、色がより鮮やかに見えます。
今回印刷対象となる紙は、以下の5種類です。
それぞれ印刷表現の想定をもって選定しています。
• コート紙(光沢のある塗工紙で発色が良い)
• マットコート紙(マット感のある塗工紙)
• 上質紙(インキを吸収しやすく発色は沈みがち)
• ファーストヴィンテージ(クラフト紙に近い色合いの紙で蛍光色を見る)
• ヴァンヌーボ(ナチュラルな風合いがありつつも発色が良い)

それぞれの紙に、6色の蛍光インキを乗せてみます。
名刺やカードといった小さな面積で、どこまで効果的に蛍光の “強さ” を使えるか。
また蛍光の強さだけに視点を置かず、用紙ごとの風合いや感じる印象などを検証の中で見ていけたらと思います。
検証物
実際に印刷してみると、ある程度想定していた通り、紙の性質に影響を受けていることが見て取れました。5種類の紙それぞれに印刷した印象を、写真とともにご紹介します。
コート紙:圧倒的な発色の良さ。蛍光色のポテンシャルをストレートに表現。

光沢のあるコート紙では、蛍光インキがインパクト重視で引き立っています。
特に蛍光ピンクやオレンジ、イエローのような高彩度な色は、見たままの “ネオン感” がダイレクトに伝わってきます。ただ、全面ベタや広い面積だとやや強すぎる印象も。
使いどころを選ぶことで、より効果的に機能しそうです。
マットコート紙:上品なマット感。意外にもかわいらしさに繋がる印象も。

マットコート紙では、コート紙に比べてわずかにトーンが落ち着いています。
インキの乗りは良好ですが、受ける印象としては “馴染んでいる” 傾向。蛍光=派手という先入観とは少し異なる表情で、意外と使いやすいバランス感を持ち合わせています。
少し落ち着いた蛍光は、かわいらしさにも繋がると感じました。
上質紙:インキの沈みで発色は控えめ。素朴でかわいい表現に。

上質紙はインキが沈み、蛍光感がやや控えめになっています。
ただ、これは悪い効果ではなく、親しみやすくナチュラルな蛍光の表現にマッチすると感じます。特に細い線や細かいあしらい、ワンポイントなど、印刷面が少ないデザインでは、柔らかい蛍光感と手触りが相まって素朴でかわいい印象に仕上がります。
蛍光をしっかり光らせたいときには不向きですが、紙もので表現したい「らしさ」をコントロールをしたい時には面白い選択肢になりそうです。
ファーストヴィンテージ リネン:クラフト調のナチュラルな紙でも、意外と蛍光感は出る。

あまり蛍光感をもって発色しないのでは?と危惧していたファーストヴィンテージですが、思った以上に蛍光感は損なわれませんでした。
紙自体の色がややクラフト寄りなので、インキとのコントラストは出にくいものの、それが逆に “差し色” として魅力的な蛍光の表現になっています。
ヴィンテージ調のデザインに蛍光が1点だけ差し込まれるような使い方の中で、良い意味での違和感を創出し、クラフト系デザインのかわいいワンポイントとして使えそうです。
ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト:風合いのある質感に、蛍光がくっきりと浮かび上がる。

独特の柔らかい風合いを持つヴァンヌーボですが、蛍光色が想像以上に映えています。
紙の表面に微細な凹凸があるため、インキがかすかに陰影を持って定着して立体感のある発色に。例えば、蛍光レッドや赤みのイエローなど、個性的な色がくっきりと美しく見える印象です。
クリエイターに好まれる、派手なだけではない “雰囲気のある蛍光” の表現を狙えます。
実践編
今回我々が製作した蛍光名刺を、私たち自身が先立って使用してみることにしました。
今回作った自社名刺はこちらです。

紙はヴァンヌーボVスノーホワイト。蛍光6色印刷で作成しました。
それぞれ鮮やかな発色と紙の持つ独自の風合いがマッチし、手前味噌ながら、印象にも残る良い名刺になっているのではないでしょうか。

特にオレンジ、ピンクといった高彩度の蛍光色をポイント使いした名刺は、想像以上に強く記憶に残るようで、名刺交換の際に必ずと言っていいほど話題になります。
実際にお渡しした方から「蛍光色印象に残りますね」「このデザインで自分の名刺も作ってみたいです」といった反応を複数いただいています。
実際にそこから具体的な受注に繋がったケースもあり、“蛍光名刺” の持つ広告的な力を実感する場面が増えています。

蛍光=派手、というイメージを持つ方も多いですが、余白の設計や紙の選定次第で「強調」だけでなく「引き算的ポイント」や「効果的なアクセント」として静かに際立つ名刺表現が可能になることも、この検証を通して見えてきました。
まとめ
今回の検証で明確になったのは、蛍光インキが持つ鮮やかな発色だけでなく、用紙との組み合わせやデザインの設計次第で多彩な表情を作り出せるということです。
コート紙のように強烈なインパクトを与えられる一方で、マット紙や上質紙のように控えめで上品な表現も可能。ヴァンヌーボやファーストヴィンテージと組み合わせれば、洗練された付加価値のあるオンリーワンのカードも製作できます。
このバリエーションは、名刺やカードなどの小さなアイテムでこそ活きてくるものだと思います。
これまで実際に使用した名刺への反応も非常に良好で、「記憶に残る」「話題になる」といった声が多く寄せられています。
蛍光印刷は単なる “派手な色表現” ではなく、デザインや用途に応じて多様な使い方ができる確かな印刷表現だと言えるでしょう。

